2012年9月26日水曜日

不確実性の時代


まず第一に「大衆社会化」と言われている問題を考えてみましよう。「群衆のなかの孤独」という言葉がありますが、現代人は多かれ少なかれ孤独の実感をかみしめて暮しています。営業担当のビジネスマンですと年間で最低規模で約五〇〇人の人々と名刺を交換するそうですから人間関係の広がり方はすごいものです。しかしビジネスを通じての交際は「こころをかよわせる」ところまでに発展することは稀で大半ば「商談かぎりのよそよそしさ」がつきまといます。

同僚との関係は、かつての職人同士の穏やかな関係から「生残りをかけた昇進競争の相手」という深刻な性格をもつようになってきました。家族の間でさえ夫が職場の生存競争に巻きこまれて仕事に打ち込めば、妻は家事ばかりの状況にいきがいを失い、子供の教育もままならず、サラリーマンは職場と家庭の双方で孤独と「よそよそしさ」に直面しなければならなくなります。

この「よそよそしさ」は職場における仕事が好景気で経営が安定していて、収入が増加するときには、まだ我慢もできますが、ひとたび不況や事業所の閉鎖や企業の合併などに見舞われますと一挙に「やり場のない不安」に発展します。とりわけ最近の情報技術の進歩や新技術の開発によって、産業の盛衰は常ならず大企業でさえ投資のタイミングをあやまったり危険なビジネスに手をだしますと、たちまち破局を迎え兼ねません。

ましてや中小零細企業の場合にはビジネスのリスクは一層大きくなります。まさに「不確実性の時代」なのです。ビジネスのリスクが多くなれば製品の回転を速め、技術改善の機会をふやし、職場の人事異動をはやめて、少数精鋭主義の経営を推進しますから、多くのどジネスマンは「ゆとり」を失い、新しい状況への適応に追われて、ストレスが蓄積し、イライラがつのるのは当然でした。