2014年11月15日土曜日

新民事訴訟法の活用例

世の中の流れは、透明性とか情報公開といったことが声高に叫ばれるようになっていた頃でした。新民事訴訟法によって、広く文書の提出義務が認められるようになったのだから、裁判の現場では当然に文書提出命令が出るだろう、と多くの人は思っていました。

例えば銀行が訴えられた裁判では、銀行の「貸出臭議書」といった重要書類を訴訟の証拠として提出しなければならなくなるだろうと期待されていました。銀行の「貸白票議書」とは、銀行が融資にあたって、どのように判断して行動したかを示す重要な証拠です。

 ところが、最高裁は九九年十一月、そうした文書を出す義務はないという判例を作りました。理由は主として、「そういうものを出させることにすると、銀行が意思形成をするときに躊躇して影響を受けるから」といった理屈でした。

ちなみに、その最高裁の決定は、新民事訴訟法がどうして一般的提出義務を定めることになったのか、といった趣旨や時代的な要請については何もふれていません。一体どういうことなのでしょうか?秦議書が開示されるのを心配して意思形成が妨げられると、何か不都合なことでもあるのでしょうか?

新しい民事訴訟法のおかけで「文書提出義務」が広く適用されることになり、証拠が出やすくなったはずなのに、結果として、そうではないということになりました。実際、銀行のいわゆる「貸し手責任」を追及する訴訟や、変額保険により被った損害について銀行の責任を追及する訴訟で、最高裁が簡単に提出義務を否定したことからして、この類の訴訟においては、余程のことがない限り提出義務が認められる余地はない」と指摘されています。