2015年3月16日月曜日

人は心の持ち方で変わる

人間は集団で生きる動物であり、何らかの形で集団への帰属意識を求めている。個人主義が確立している欧米でも家庭、地域、カントリークラブ、教会など社会の隅々で帰属意識が大切にされている。人事部長のころ、若い部下や他部門の人だちから「会社を辞めたい」と相談されたが、原因のほとんどは仕事の悩みではなく、職場の人間関係だった。人の良いところを見つめ、人と人との間でたくましく生き。成長する人間が増えればよいと願っている。とりわけ若者たちには企業でなくてもいい、自分の居場所と仲間をどこかに見つけてほしい。そこで夢中になれる対象を発見できれば、いつの日か自分の持ち味と個性を生かして目標と夢に向かって進めると思う。

若い人は「夢を持ちたくても持てない」と言うかもしれない。その気持ちもわかるか、自分の可能性を信じて遊びでも何でもいいからまず、行動してみたらどうか。案外そこから道が開ける気がする。将来を担う若者たちに「人は心の持ち方で変わる」と最後にエールを送りたい。2011年3月期決算で、「空調事業グローバルーナンバーワン」(世界販売シェアー位)の目標を達成したダイキン工業、世界の主要な空調メーカーの売上高の比較のグラフを参照。長年の目標を達成した同社はこれからどんな企業を目指すのか。本文庫の発刊にあたって井上会長に経営目標や後継問題など様々なポイントについてインタビューした。井上氏の発言の骨子を項目別に紹介する。

ダイキンは2011年中をめどに、15年度を最終年度とする新中期5ヵ年計画を策定中だ。経営計画や戦略が絵に描いたもちにならぬよう「実行に次ぐ実行」を求めてきた井上。10年度までの5ヵ年計画『フュージョン10』(F10)がもたらした成果と、積み残した課題をどのようにとらえ、新たにどんな計画を打ち出すのか。2006年度にスタートした前半計画(06~08年度、08年度は前半と後半の両方に含まれる)の最初の2年間は、急伸する欧州空調事業などか牽引役となって、当初計画を上回り、08年度目標を1年前倒しで達成できた。これを受けて、最終ターゲットである10年度の目標を上方修正(売上高1兆9000億円、営業利益1900億円)して後半計画(08~10年度)をスタートさせたが、08年秋のリーマンーショックの影響は大きく、10年度は目標値に届かなかった。

グローバル空調事業に資源配分の重点を置いた。マレーシア空調大手のOYL買収、ドイツ暖房機メーカーのロテックス買収、エアフィルターメーカーの日本無機買収、中国の空調最大手の格力電器との提携など、金額面でも質的にも過去とは一線を画すM&A(合併・買収)、提携・連携を思い切って意思決定し、実行した。OYL買収でアプライト(大型空調)事業の強化と北米市場への本格参入の足がかりを作った。格力との提携でインバータ技術のオープン化を進めたことで、中国の空調市場でインバータ化か加速するなど想定以上の成果を収めた。大型M&Aや提携の効果もあり、「空調グローバルーナンバーワン」の目標を達成した。ただ、シナジー効果の発揮は道半ばであり、大きな成果の刈りとりはこれからである。

油機事業の海外展開、特に中国への進出が遅れた。電子事業本部の抜本的な方向性を打ち出せなかった。環境意識の高まりを追い風に、暖房事業、インバータ戦略などを推進した。攻守両面からの環境への取り組みにより、「環境貢献企業」として一定の評価を得た。インバータ戦略、暖房事業などはおおむね進展した。新冷媒についても、業界を主導してグローバルにロビー活動を推進、一定の成果を収めた。機器周辺事業(サービスーソリューション、エンジニアリング)はあまり拡大しなかった。