2015年6月15日月曜日

転職回数が多過ぎる

即ちジョブホッパーになるということだが、転職の理由がもっともであれば、採用するほうも斟酌してくれる。上司と相性が悪いから転職することは、能力がないからクビにされることよりずっとよい。あなたを採用する新しい上司も転職経験者であろうから、そうした人情の機微は分かってもらえるはずだ。もっともあなたが毎年、転職しているような人材なら、引き取り手はないかもしれないが。上司の「出来不出来」をどう評価するか。好き嫌いと違って、その人間の「出来不出来」は議論が大いに分かれるところだ。誰の視点で能力を見極めるかによって、同じ人に対する評価が一八〇度違うことがある。

こんな状況を想像してみよう。あなたと同じような仕事をする人(つまり将来の同僚)の採用面接に立ち会うとする。その時に、あなたがその人間を脅威と考えるか、チャンスと捉えるかによって対応が違ってくるはずだ。「脅威、将来のライバル」とみなすと、あなたの中でこの採用予定者を排除しようとする意志が働く。排除する理由として「気に食わない、好きになれない」では面接でバツをつける合理的な理由にならないので、あなたは「能力や資質に懸念がある」という理屈をひねり出さなければならなくなる。

そうした際によく使われる拒否理由が、「能力はあるかもしれないが、この仕事に要求されているものとは違う」とか、「力はありそうだが、腰が据わっていない(転職回数が多過ぎる)」、あるいは「能力は申し分ないが、チームプレーヤーとして働くことができるかどうか不安がある」などである。能力を認める振りをして実は認めない、能力と関係のない基準を持ち出す、レッテルを貼る、といった作為をすることで、建前は三六〇度評価の好きな外資系(採用時は特にそうだ)の採用において、自分を脅かす恐れのある未来の同僚を排除できるのである。

もっとも上司が既に採用を決めていて、形式的に面接を行なっている時期は、あなたのバツの評価は考慮されない。かえってマイナス評価をしたあなたを、上司は疑い、疎み始めるかもしれない。だから外資系では採用時にボスが腹を決めていることが分かっている場合には、無難な評価を下し、自分に類が及ばないようにする。ボスの腹がハッキリしない時だけ、我を通すことが可能になる。外資系には敵味方を明確にする文化がある。一方で新しく会社に入ってくる人間を、自分の仲間や協力者だと捉えるならば、積極的に彼らを味方に取り込もうとすることになる。企業風土改革のためには仲間が一人でも多いほうがよいと、面接の最中から社内事情や自分の抱負まで語り始める人もいるかもしれない。

しかし面接時のあなたの言動は、あなたの上司に筒抜けになると覚悟しておく必要がある。面接を受けた人は、あなたから聞いた話を内緒にするといった配慮をせずに、何を聞かれどう答えたか全てを上司に話してしまうかもしれない。その中に少しでも仁司批判と受け取れる内容があれば、仲間として取り込もうとした人間に結果として寝首をかかれる破目に陥るかもしれないのである。外資系では日本企業に比べて、敵味方を明らかにするという風土がある。あれこれ思い悩まずとも自分の敵と味方がハッキリ分かるので、仕事がしやすいとも言える。しかし、中には「味方と見せかけて敵」「敵のように振る舞いながら実は味方」といった複雑な動きをする人間がいるので要注意だ。