2015年8月20日木曜日

異常な低金利の副作用

バブルとはひと言で言えば日本経済の資産価値の急激な膨張である。資産の主なものは土地であり、株である。一九八〇年代中盤に金利が極端な低水準に据え置かれたことが、土地と株の価格を引上げる直接の契機になった。土地の価値は、理論的に言えば、その土地を活用して生まれる将来収益の現在価値であると言える。

現在価値とは将来生まれる収益の総計を市場金利で割引いたものである。つまり収益は遠い将来になるほど本当に入手できるかどうか不確実性が高まるからリスクが大きい。金利とはリスクの代償だから、金利で総収益を割引いたものが現時点で見たほぼ確実な収益になるわけである。それが土地の理論的な価値であるとすると、当然割引く金利が安くなれば土地の理論的価値は高く見積もられる事になる。

株の場合も同様に金利が下れば債券の現在価値が高まるから、それと連動して株の価値も高く評価されるようになるのである。一九八〇年代中盤に金利が異常に低く引き下げられたのにはいくつかの特殊な理由があった。ひとつは一九八〇年代前半までっづいたアメリ々の高金利の是正にともなって、日本も金利の引下げを余儀なくされたことであり、またいまひとつは一九八〇年代中盤の円高不況脱却の手段として財政政策よりも金融政策に大きく負担がかけられたことである。とくに後者については、政府が財政再建に大きな力点を置いていたために、過度に金融政策に負担がかかり、極端な低金利がしばらくっづけられる結果となった。

いずれにしてもこうした異常な低金利がつづいた結果、土地や株の価値が急激に膨張し、それが投機を呼んで、さらに資産価値が膨張するというバブル経済の異常なスパイラル現象が発生した。企業は急速な株価の上昇期待の下で、いわゆるエクイティーファイナンスによる資金調達を積極的に行うようになった。

新株や転換社債を発行して資金を調達するわけだが、しばらくするとその市場価値は非常に高まるから、投資家はそれを売れば莫大な儲けになり企業側は資金調達コストが殆んどかからないという特殊な状況が発生しており、多くの大企業が争ってそうした戦略を拡大したのである。そうして調達した莫大な資金はさまざまな用途に投資され、いわゆる土地テク、財テクを進めた企業や人々も多かった。つまり、上昇をつづける地価や株価をあてこんで、これに投機をして儲けようとしたのである。