2015年9月15日火曜日

相次ぐ外資との提携

日本の金融機関は、このような外資の席巻するところとなるのだろうか。海外の金融再編成の過程を観察していると、有力な金融機関に共通するパターンは、まず比較優位の分野を伸ばすことに専念し、得意分野で確固たる地盤を築き了えると、今度は相互補完をねらった規模の拡大を目指して活発な買収や提携に乗り出す、というものである。日本のビッグバンの進行と歩調を合わせた数々の提携は、その余勢をがっての日本市場への参入であることはいうまでも
ない。

また、日本側の事情は明白であろう。これまでの護送船団方式の金融行政下で、横並びの経営を行い、先端金融技術や資産運用能力の開発に遅れをとり、不良債権処理の重荷で今後の戦略を独自に描けない本邦金融機関は、外資との提携に活路を見出そうとしているのである。外資にとって、本邦金融機関のもつ顧客リストは魅力であり、自分たちの商品・サービスをそのネットワークを通じて広範な顧客層に販売できれば、過重な投資負担を免れることができる。本邦金融機関は、売り子をしながらノウハウを手に入れようとする。

一方で、信用補強のために外資と組もうとする本邦金融機関もある。日本債券信用銀行とバンカーズートラストの業務提携や、日本長期信用銀行とスイス銀行の提携がこれである。外資の行動のケースースタディとして、後者の提携をとりあげてみよう。
 
スイス銀行と日本長期信用銀行の提携は、スイス銀行の信用を利用して起死回生をはかろうとした長銀と、その金融債消化先など顧客リストに魅力を感じたスイス銀行の思惑によって成立したものといわれた。その内容は三%ずつの株の持ち合い、スイス銀行による長銀の劣後債七〇〇億円、優先株一三〇〇億円の引受、それに投資銀行、投資顧問、プライペートーバンクの分野での合弁会社の設立というものであった。

ところが、スイス銀行は長銀の資産を詳細に調査した後、慎重なスタンスに変わり、優先株引受を繰り延べ、持ち合い比率も一%に切り下げた。しかも、実際に買い入れたのは、株価急落後というタイミングのよさである。