今はもうひどい立ちくらみと頭痛で、週一回病院へ行くのさえ本当につらい。産科医は「もう、こりゃあ長期戦じゃなあ」というし、卵巣も子宮もガタガタでねえ、何度も入院してよく診てもろうても、どうしてこんなに熱が出るのかわからんし、ちょっと仕事するとそりゃあひどい頭痛がして吐いてしまうんじゃが、それもどうしてかわからん。「こういう病気はなかなかわからんものよ」と、若い頃からずっと診てもろとる産科医じゃからなぐさめてくれるけど、わたしにはわかっとんのよ、こんなに更年期障害がひどいのは、絶対、若い頃の掻咤のせいじゃって。
ようけ(何回も)したもんねえ。私は妊娠しやすい体質でね。うらめしいくらい妊娠しやすいんよね。トーチャンは、「そんな気色の悪いもん(コンドームのこと)なんかせんぞ」というし、全部で一〇回くらいは(中絶手術を)したな。先生に(今回の中絶と次回の間を)三ヵ月は離さんといけんと言われたのに、三ヵ月を待てずにオロシたこともある。あの頃はみんなオロシとったけんねえ。誰も、あとのことまで、考えとる余裕もないし、そんなに大変なことじゃとも思うてなかったけん。
村では一番ええ暮らしをしとったくらいの家でしたから、まさか三人目を妊娠した時に、お義母さんからオロセといわれるなんて、思ってもなかったですわ。「そんなにボコボコ産まんでも、何とでも方法はあるじゃろうがね」と言われた時には一瞬わけがわからんかったですよ。その時はもうお腹の子を産むつもりで愛情も持っていましたので、オロシたくなくて「何とか産ませて下さい」と手をついてたのんだんですが、お義母さんはすっかり腹立ててしまって「勝手にしたらええ」と、それからいっさい口もきいてくれんし、何もしてくれんかったですよ。もちろんお産の世話も産後のこともです。情けなかったですわ。主人は女の気持ちがわかるような人じゃあなかったし、坊ちゃん育ち亡何の手伝いもできるような人じゃあなかったですから、涙流しながら私一人が何もかもやりましたよ。
次にできた(妊娠した)時には、主人にお金をもろうて、今治までオロシに行きました。主人?もちろんあの人は、私かオロシてもオロさんでも何にも関心はないんですが、お義母さんのいやな顔を見んで済むだけでもよろこんどんのとちがいますか。二回立て続けにオロシました。もう、いや! こんなことと思い、次に妊娠した時、一応主人にも相談してククって(卵管結紫)もろたんです。
中絶の手術は本当にいやですもんね。場所が場所ですし、同年代の子を見るたびに心がうずきますけん。まあククッたおかげでその手術の心配はなくなりましたが、四二(歳)で生理がアガつてしもて、血の道も若いけんひどかったし、いっぺんで髪が真っ白になってしもうたんですよ。こんなに早よ生理がなくなったのは、まちがいなくククッたせいだと思います。亡くなった人(義母)の悪口を言っても始まらんと思いますが、いまでもあの頃のお義母さんや主人の仕打ちを思うと、ええ気がせんですわねえ(岡村島、N子さん)。
もともと江戸期上級武士の倫理観として、日本に定着した儒教思想は、明治以後、一般庶民の暮らしの規範へと拡大し、とくに家族内の人間関係に大きな影響を与えた。そこでは、夫婦の結びつきの基本に愛情やいたわりなどの存在を重要視せず、さらにそれをつちかい育てていく必要性さえ、さほど認めていなかった。
2012年12月25日火曜日
2012年9月26日水曜日
不確実性の時代
まず第一に「大衆社会化」と言われている問題を考えてみましよう。「群衆のなかの孤独」という言葉がありますが、現代人は多かれ少なかれ孤独の実感をかみしめて暮しています。営業担当のビジネスマンですと年間で最低規模で約五〇〇人の人々と名刺を交換するそうですから人間関係の広がり方はすごいものです。しかしビジネスを通じての交際は「こころをかよわせる」ところまでに発展することは稀で大半ば「商談かぎりのよそよそしさ」がつきまといます。
同僚との関係は、かつての職人同士の穏やかな関係から「生残りをかけた昇進競争の相手」という深刻な性格をもつようになってきました。家族の間でさえ夫が職場の生存競争に巻きこまれて仕事に打ち込めば、妻は家事ばかりの状況にいきがいを失い、子供の教育もままならず、サラリーマンは職場と家庭の双方で孤独と「よそよそしさ」に直面しなければならなくなります。
この「よそよそしさ」は職場における仕事が好景気で経営が安定していて、収入が増加するときには、まだ我慢もできますが、ひとたび不況や事業所の閉鎖や企業の合併などに見舞われますと一挙に「やり場のない不安」に発展します。とりわけ最近の情報技術の進歩や新技術の開発によって、産業の盛衰は常ならず大企業でさえ投資のタイミングをあやまったり危険なビジネスに手をだしますと、たちまち破局を迎え兼ねません。
ましてや中小零細企業の場合にはビジネスのリスクは一層大きくなります。まさに「不確実性の時代」なのです。ビジネスのリスクが多くなれば製品の回転を速め、技術改善の機会をふやし、職場の人事異動をはやめて、少数精鋭主義の経営を推進しますから、多くのどジネスマンは「ゆとり」を失い、新しい状況への適応に追われて、ストレスが蓄積し、イライラがつのるのは当然でした。
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