2014年6月25日水曜日

給付乗率は現在も下がり続けている

正確な年金額を独力で計算しようとすれば、すべての給与明細表を保存しておかなければなりません。こんな人はほとんどいないでしょう。社会保険事務所にいけば、教えてもらえます。社会保険事務所は、社会保険庁の大型コンピューターにオンラインで結ばれています。この大型コンピューターにすべての被保険者の記録が保存されているのです。

給付乗率とは給付乗率は、従前生活の維持ということと関係があります。一九八六年改正前は、給付乗率は千分の十でした。モデル年金の加入期間は四十年ですので、給付乗率に加入期間を掛けると、千分の四百、すなわち四〇%となります。厚生年金(報酬比例部分)の年金額は、平均標準報酬月額に「給付乗率×加入期間」ですので、カッコの中は四〇%になります。このことは何を意味するのでしょうか。

現役時代の平均給与の四〇%を、厚生年金(報酬比例部分)で保障しようとしているのです。実際に受け取る年金額は、これに基礎年金分が加わります。夫婦二人分の基礎年金を加えると、厚生年金では従前賃金の約六割を保障することになります。

給付乗率は現在も下がり続けています。一九八六年改正で、急激な給付水準の低下を避けるため、二十年かけて給付乗率の引き下げを行うように決めたからです。二〇〇六年で引き下げは完了します。千分の十が千分の七・五になるのです(二〇〇〇年改正で五%削減)。千分の七・五という給付乗率は、先の計算によると平均標準報酬月額の三〇%【千分の七・五×四〇年】を保障しようとするものです。

一九八六年改正は、いまから振り返るとずいぶん、思い切った給付水準の削減を行ったものです。もっとも、この背景には年金制度の成熟化、すなわち平均加入期間の伸びがありました。給付乗率が下がっても加入期間が伸びれば、受け取る年金額は変わらないのです。

2014年6月11日水曜日

公募発行と私募発行

これらのことから、金融取引において、資金の融通を受けた主体の状況を監視することは、資金提供者の利益を保全するために、ほとんどの場合に不可欠である。しかし、こうした監視(および監視の結果に基づいて、契約違反が認められた場合には、適切な対抗措置をとる)という活動は、審査の作業と同様に、費用と専門能力を要するものである。したがって、先と同じ理由で、監視の作業も、金融機関という専門的な組織に委託することが効率的であるといえる。

なお、金融機関が資金調達者を監視(モニターするのは、直接的には資金提供者の利益を守るためであるが、そのことは、資金調達者にとっても望ましいと考えられる。というのは、そうした監視が行われないならば、資金提供者は自己の利益に反する行動を資金調達者がとるのではないかという疑心暗鬼に陥り、資金提供そのものを拒否してしまうかもしれないからである。金融機関によるモニタリングは、資金調達者にとって、自己の潔白を証明する手立て(これを「ボンド」ともいう)ともなり得るのである。なお、以上述べてきた審査・監視活動を通じて金融機関が遂行している役割は、金融機関の働き(金融仲介機能)のうちで、とくに「情報生産機能」と呼ばれている。

右に述べた金融取引にあだっての審査や監視の必要性の度合は、すべての資金調達者について同じではない。その必要性が低い主体も、逆にその必要性が高い主体もあり得る。例えば、中央政府(国)や超一流とされる大企業などは、金融取引以外の活動を通じてほとんどの資金提供者によく知られている。こうした主体が資金調達者となるケースでは、事前に審査を行う必要性はかなり低いといえる。また、この種の主体がデフォルトを起こすおそれも少ないとみられるので、事後の監視の必要性もかなり低いといえる。

加えて中央政府や大企業が必要とする資金の量は、巨額に及ぶことが通例である。こうした場合には、多くの主体から資金を調達する必要がある。すなわち、これらの主体が資金調達を行うケースでは、多くの主体と取引することを可能にする条件(広く知られている、このことを「市場でのネームがある」という)とその必要性がともに揃っている。こうしたときには、資金提供に対する将来の見返りの約束を一定単位ごとに分割した「券」として必要な枚数だけ発行し、その券を購入してもらうというかたちで資金提供を受けるという方式がとられることがある。ここでいう資金調達のための券の実例としては、国債や株式、社債などがあげられる。以下、こうした券を「証券」と総称する。